福岡県みやま町は、静岡県と並ぶ日本有数のセロリの大産地。セロリは暑さが苦手な野菜で、出荷時期は11月から6月までに限られている。このセロリを1年中料理に使い、みややを代表する特産品を作りたいという想いで立ち上げたのが「ズッペン」だ。
「もともとは、「九州ちくご元気計画」に応募し、私たち主婦5人で始めたのがきっかけです。ちょうど、みやまと瀬高町が合併した時期だったので、みやまを代表する特産品が作りたい。そこで、セロリに着目し、セロリを1年中料理に使えるようなものづくりに挑戦したのが、今から約5年前です」と語るのは代表の森弘子さん。
「九州ちくご元気計画」は、雇用創出を核とする地方活性化プランのデザインワークのこと。2012年、ズッペンは第14回福岡県産業デザイン賞を受賞し、ひと際目をひくおしゃれなパッケージが話題となった。
おしゃれすぎて、地元の道の駅ではまったく売れず。前途多難なスタート
「デザイン賞を受賞したものの、当時、地元の道の駅ではまったく売れなかったですね〜(苦笑)。玄関やトイレに置いてあるポプリに間違えられたり。商品は作ったものの、売り先を考えてなかったので、当時はホントにどうしよう・・って必死でした」と語る森さん。
みやまのセロリと地元の野菜を乾燥させて、瓶詰めにしたパッケージは、雑貨を思わせるようなおしゃれ感。そのおしゃれなデザインが逆に仇となり、地元の道の駅や直売所ではまったく売れなかったそうだ。
「地元で売れなかったので、全国の商談会や展示会にどんどん出店しました。バイヤーさんに食品売り場ではなく、雑貨コーナーに置いてみたらとアドバイスをいただき、東京や大阪、札幌などのおしゃれな雑貨店から少しずつ注文が入るようになり、今では全国の主要都市で取り扱っていただけるようになりました。」(森さん)
ズッペン誕生のルーツはドイツ?!
おしゃれなパッケージがズッペンの大きな特徴のひとつだが、なぜ、今のデザインになったのか。そのルーツはドイツにあった。
「九州ちくご元気計画」に応募するとき、セロリを使った商品を作るというのは決まっていたのですが、ジャムにするか、お菓子にするか、何を作るのかが決まってなかったんです。そんなある日、セロリを乾燥したおだしがドイツにあると聞いて、コレだ!とピンときたんです。けれど、インターネットで調べても、まったく検索にひっかからず、どんなものか、どんな味なのかもさっぱりわらかない。どうしようかと悩んでいたある日のこと。友人がドイツに旅行に行くから、セロリのおだしを買ってきてくれると言ってくれたんです。
友人が帰国後、お土産に買ってきてくれたセロリのおだしは、キラキラ輝くガラス瓶に入ってて、まるで宝石みたいに輝いてたんです。その感動を忘れたくて、パッケージデザインは瓶入りにこだわりました」と当時を振り返りながら熱く語る森さんは、今でもそのときの感動がものづくりの原点だという。
ドイツのセロリのおだしの名は「ズッペン ゲ ミューゼ」。「ズッペン」とは、ドイツ語で「スープ」を意味する言葉。要するに、セロリを使った、スープの素のこと。この名前が「ズッペン」の由来だ。
ドイツの「ズッペン ゲ ミューゼ」筑後版を作る!
待ちこがれていた「ズッペン ゲ ミューゼ」を食べてみたところ「あれっ、思ってたのと違う」というのが最初の感想だったそう。
「ひと口食べて、ドイツの味がしたんです。たぶん、日本人には馴染みのないエシャロットやチャーベルなどがふんだんに使われていたからだと思います。
正直いって、私たちの口には合わない。ならば、ネギやホウレンソウ、なす、キャベツなど地元産の野菜を乾燥させて、筑後版ズッペン ゲ ミューゼを作ろうと決意しました」(森さん)
その後、試行錯誤を重ね、セロリをベースにブレンドを調整したものがそろい、今では野菜たっぷりスープ、野菜リゾット、野菜パスタ、ドライセロリ、セロリの炊き込みごはん、ピクルスなど合計24種類がラインナップ。
〜DOCORE(どおこれ)に出店してみて〜
「DOCORE(どおこれ)さんに出品するようになって、バイヤーさんからの問い合わせが増えるようになりました。DOCORE(どおこれ)さんは、博多駅に隣接しているので、新幹線降りたバイヤーさんたちが、福岡のいいものを探しにDOCORE(どおこれ)によく来られているようです。
全国各地の百貨店の催事の出店のお誘いを、バイヤーさんから直々にご連絡をいただくことも多くなりました。DOCORE(どおこれ)さんのおかげです。ありがとうございます」と森さん。
今年は、セロリをベースにしたラスクが新登場。これからもますますズッペンに目が離せない。